柔らかい区画整理とは?その特徴について解説

区画整理のイメージ土地区画整理事業

みなさん、区画整理って言葉、耳にしたことありますか?

知っている人、なんとなく聞いたことある人、実際に関わったことのある人、いろいろいらっしゃるとおもいます。

区画整理(正式名称:土地区画整理事業)については、別の記事でも書いていますので、今回は最近の区画整理のトレンドとも言える“柔らかい区画整理”について取り上げて見たいと思います。

「柔らかい区画整理」が注目されるようになった背景

区画整理のざっくりおさらい

区画整理の主な目的は以下の2つです。
・公共施設(道路・公園など)の整備
・宅地の利用増進

区画整理はさまざまな地域でまちづくりの手法として用いられていますが、主に以下のような地域で事業化が検討されます。

・公共施設や商業施設など人々が暮らす上での都市機能が不十分な地域
・建物が密集していて、火事や地震などの災害時に危険な地域
・実際に災害が起こった後の復興事業として行う地域(例:東日本大震災・熊本地震など)

実に、日本の市街地の約3割が区画整理事業によって整備されています。

事業規模や広さは場所によってさまざまで、数ヘクタールの小規模ものから数百ヘクタールの大規模なものまでさまざまです。

柔らかい区画整理が注目されるようになった背景

区画整理のデメリットとしては、とにかく時間がかかるということ。

区画整理はほとんどが、数十ヘクタールから数百ヘクタールのものになるため、資金的な問題や、合意形成がうまくいかないなどの問題が必ず発生します。

私の経験や他都市の事例を踏まえてですが、規模にもよりますが、普通に10年以上、長いところは30年以上かかっているところもザラにあります。

また昨今は、市街地において、以下のような課題も出てきています
・都市施設や民間ビル等の老朽化とそれに伴う更新
・点在する空き地・空き家への対策
・人口減少、高齢化に対応しながらまちづくりを進める上での担い手の不足

これらは、多くの地方都市における近年の課題となっています。

近年のライフスタイルの変化など、都市に求められるニーズはさまざま

また、近年の社会情勢の目まぐるしい変化や、多様化・複雑化する市街地でのライフスタイルなどのニーズにもまちづくりの視点から応える必要があります。

その中で、地方公共団体だけでは財政的にも厳しく限界があるので、公民連携による「まち」の価値と持続性を高める取り組みも求められています。

地区ごとの課題や事業の実現性に応じ、市街地整備の手法を柔軟に適用し、合意形成を図りながら“既成概念”にとらわれず「小規模・短期間・民間主導」型の“スピーディー”「柔らかい区画整理」を進めていくことが効果的と考えられます。

このような背景から、“小規模で柔らかい区画整理”に注目が集まっているのです。

柔らかい区画整理の特徴

特徴1:「換地照応の原則」にこだわらない!

そもそも、「換地照応の原則」って?ということですが、以下引用文です。

換地照応の原則

換地計画において換地を定める場合においては、換地及び従前の宅地の位置、地積、土質、水利、利用状況、環境等が照応するように定めなければな らない(法第 89 条)。

土地区画整理法運用指針(国土交通省HP)

つまり、土地区画整理事業において、事業以前の宅地と事業後の宅地は、場所、形、周辺環境などが同程度のものになるように定めましょうね。ということです。

柔らかい区画整理では、このカチカチの既成概念を取っ払います。

事業の目的や地域の状況において、必ずしも「換地照応の原則」によらない柔軟な集約完治の運用が可能です。
土地利用の意向も踏まえて、地権者の合意に基づき、土地を集約する申出型の換地も可能です。

特徴2:「減歩ありき」ではない!

一般的な土地区画整理事業では、公共減歩や保留地減歩を伴うもの”という既成概念があります。

「柔らかい区画整理」では、これらの”思い込み”をとっぱらい、文字通り柔軟に対応します。

例:道路の場合

例えば、道路であれば、区画道路の付替えや隅切りの整備等も公共施設の新設又は変更と解釈します。
つまり、公共減歩によって生み出すのではなくあくまで「新設」または、既存の公共施設の面積と同じ規模のものを単に別の位置に付替え(移動)するというものです。

こうすることで、一切減歩は生じません。

例:公園の場合

公園の場合は、仮に区画整理予定地区の近くに既存の公園がある場合は、必ずしも公園を設置義務の例外と解釈します。

このように柔軟な運用で事業を推進することができます。

特徴3:柔軟な地区界の設定

既成市街地では、権利関係が複雑になり、入り組んでいる場合がほとんどです。

もちろん、事業のメリットを伝えたとしても、住み慣れているのなどの理由から、事業に反対する人がいるのも当たり前の話です。

そこで、円滑な合意形成や事業の短期化を図るため、敷地界を地区界にするなどして、柔軟なエリア設定が可能です。

また、密接不可分の関係にあるなら、飛地を含めた地区設定(飛び施行)も考えられます。

特徴4:保留地減歩と負担金を柔軟に選択

これまでの事業スキームでは、減歩として権利者からいただいた土地を、保留地として換地し、それを売却することで事業費に充てるということを行うのが一般的でした。

ただ、密集市街地などの細分化している敷地の統合、小さな筆(土地)も存在するため、保留地として換地してもなかなか売却ができなかったり、細かい土地が増える分手続きが煩雑かして、事業の進捗にも影響が及ぶことなどが懸念されます。

そこで、保留地減歩により土地を直接的に提供するのではなく、負担金を支払う形で事業に貢献するという選択肢もあるということです。

集約化を図る事業では、保留地減歩をしないで負担金で事業費を賄うことも柔軟な運用の一つです。

「柔らかい区画整理」のメリット

以上のように、さまざまな特徴を持ちますが、メリットとしてまとめると以下のようになります。

  • 事業期間が短い!
    単純に「範囲が小さい」ので、事業期間が短く(平均2年弱)、早期の事業効果が見込めます。

  • 合意形成が図りやすい!
    地権者が比較的少人数のため、合意形成が図りやすいです。
    個人施行(同意含む)が多数を占めています。

  • 減歩負担は少なめ!
    市街地の小規模な区画整理事業は、地目も変わらず、土地の入れ替え中心のため、公共減歩の負担は比較的小さい事業が多い。
    場合によってはゼロ減歩ということもあり得る。
    保留地を設けず、地権者負担金や補助金によって事業を賄っている。

  • 柔軟な運用を活用!
    敷地整序、集約換地、連鎖型等の柔らかい区画整理手法を積極的に活用

まとめ:既成概念にとらわれず柔軟でスピーディーな事業推進へ

これまで見てきたように、「換地照応の原則」、「減歩負担あり」、「保留地売却」といった既成概念にとらわれず、地域ごとの実情にあった、柔軟でスピーディーな区画整理事業の推進が求められています。今後、推進事例や新たな制度も追加されていくと思いますので、また色々と紹介できたらと思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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